銀歯が気になる

銀歯（メタルインレー）は、保険が適用されるため比較的安価に治療することができます。
比較的耐久性が高いというメリットがありますが、金属でできているため見た目が悪いだけでなく、歯とピッタリ合いにくいために二次虫歯を引き起こしやすかったり、汚れがつきやすいために歯周病や虫歯再発の要因になります。
また型取りをして詰めものを作るため、健康な歯の部分をある程度多く削る必要があります。

金属アレルギーと聞くと、ネックレスやイヤリングなどのアクセサリーをつけたときに、肌が痒くなったり赤くなったりするのをイメージされる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、お口の中でも銀歯を入れることで、金属アレルギーのリスクが上がる可能性があるといわれています。
金属アレルギーの原因は、銀歯などに多く使われているパラジウム合金が多く、銀歯がお口の中にあると、唾液中に金属イオンが溶けだし、金属アレルギーを誘発してしまうのです。
金属アレルギーの症状は、口内炎やピリッとした舌の炎症や痛み、口唇炎、口角炎などがあります。
銀歯が原因となるアレルギー症状は、お口の中や周辺だけでなく、身体のほかの部位にも皮膚炎などの症状を発症することがあります。
このような症状が見られる場合は、アレルギーの原因となっている金属を特定するため皮膚科で金属アレルギーの検査を受ける必要があるかもしれません。

銀歯は強度があり耐久性が強いのがメリットですが、その反面、変形を起こしやすい材質のため、変形した部分から虫歯になりやすくなってしまうといったデメリットがあります。
また金属そのものの変形だけでなく、比較的腐食しやすい材質のため、腐食によってさらに隙間が広がりやすい素材でもあります。
銀歯の変形によって銀歯と歯の間に隙間が生じると、その中に細菌や唾液が侵入し、銀歯と歯の間に虫歯ができる可能性が高くなります。
さらに、銀歯はレントゲンを通さないため、レントゲンを撮っても内部がどのようになっているのか確認できません。
そのため、虫歯が大きくなるまで発見が遅れることがあり、神経の治療や、抜歯をしなくてはいけなくなることもあります。

メタルタトゥー（金属による入れ墨）とは、金属の成分が溶け出すことで歯ぐきに沈着し、歯ぐきが黒くなってしまった状態です。

お口の中は常に高い湿度が保たれており、摂取する食べ物や飲み物などからさまざまな刺激を受けています。
銀歯は常に激しく変化する環境に置かれているため、そのような環境下にあると、劣化したり表面の金属が溶けだしたりします。
溶け出した金属は、歯ぐきに沈着し、歯ぐきの色が黒くなってしまいます。
メタルタトゥーは、歯ぐきが黒くなってしまうため、審美性を悪くしてしまうため、特に、前歯のように審美性が求められる部分には注意が必要です。

アマルガムとは、水銀を多く含んだ歯科用水銀のことで、銀色をした詰めものを指します。
近年ではほとんど使用されなくなった素材ですが、少し前までは虫歯を除去したあとに多く使用されていました。
アマルガムは、劣化しやすく表面がザラついて黒く変色しているため、他の詰めものと比較的見分けがつけやすい素材です。

銀合金は保険が適用される金属です。
そのため、安価に治療を受けることができます。
銀合金は銀を主成分としていますが、スズ・亜鉛・パラジウム・イリジウム・インジウムなども含まれています。
また、アマルガムのように、人体に悪影響を及ぼす可能性もないため、安心して使用できます。
金銀パラジウム合金と比較すると、強度が弱く脆い他、短期間で酸化・腐食し黒く変色してしまうので、見た目があまり良くありません。
また、銀合金は柔らかい性質を持っているため、噛んだ際に違和感が出たり、金属アレルギーの原因になりやすくなるといったデメリットがあります。

歯科治療でいわゆる「銀歯」と言った際には、先程の「銀合金」と、この「金銀パラジウム合金」の両方を指します。
素材としては「金銀パラジウム合金」の方が優れているため、こちらの方が使われることが多い素材です。
金がわずかに含まれてはいますが、見た目は銀色です。
金銀パラジウム合金に含まれている金属は、金・パラジウム・銀・銅などがあり、金やパラジウムは割合がJIS規格で定められています。
強度が高く、機能回復効果に優れており、健康保険が適応される金属です。
しかし、金属がお口の中に溶け出すことで、金属アレルギーやメタルタトゥー（歯ぐきが黒ずむ）などを引き起こす可能性があります。

ダイレクトボンディングは、コンポジットレジンという材料をお口の中で直接形作り、光を当てて硬化させていく治療法です。
ダイレクトボンディングのメリットは、歯を削る範囲を最小限で済ませることができ、ほぼ1回の治療で終わらせることができることです。
また、接着性が高くピッタリと詰めることができるため、二次虫歯にもなりにくい治療法です。

一般的な詰めものは長く使っていると外れてしまうことがありますが、このときは再治療となることが多く、通常の治療と同じだけの期間と費用がかかってしまいます。
ところがダイレクトボンディングは接着性が非常に高いため、外れるということがほぼありません。
長く使っていたり強くかんでいたりすると欠けてくることがありますが、短時間かつ安価に補修することが可能です。

また、ダイレクトボンディングはセラミック80%の歯科用複合材料を用いるため、天然の歯に近い自然な色を再現することができます。
100%セラミックではないので、長期的に使用していると変色することがありますが、変色の程度は飲食の習慣などにもよるため、10年経ってもほとんど分からないほど変化が少ないこともあります。

セラミックは、食器などに使われている陶器と同じ素材でできているため、天然の歯に最も近い色調・透明感・艶を再現できる材料です。
変色も起きないため、歯を白く保つことができます。
表面がツルツルしているため、プラークがつきにくいのもメリットです。
しかし、割れたり欠けたりしやすいことから、厚めに作る必要があるため、健康な歯を削る量が多くなってしまうのが最大のデメリットです。

歯のホワイトニングと、お口の中にある銀歯を外して白い歯に同時に替えたいと考えている場合は、先に歯のホワイトニングをしてから審美治療を行います。
ホワイトニングの薬剤は、天然の歯にしか作用しないため、銀歯や詰めものは白くなりません。
ダイレクトボンディングやセラミックといった治療は周りの歯の色と調和するよう色を選んでいきますが、この治療のあとでホワイトニングによって周りの歯が白くなってしまうと、色が合わなくなってしまうからです。
何か特別なご事情がない限りは、先にホワイトニングをした後で、銀歯を白いものに替えるのがおすすめです。

●ダイレクトボンディングとは

ダイレクトボンディングは虫歯治療の一種で、セラミック80%の歯科用複合材料の詰めものによる治療です。
他の詰めものと違い健康な歯をほとんど削らないで済む、つなぎ目がなく歯と一体となるため見た目がキレイで虫歯も再発しにくい、基本的に1回の治療で終わる、などのメリットがあります。

●患者情報

40代女性

●主訴

右下の奥歯に入っている銀歯の見た目が気になるので白くしたい。

●治療期間

1回

●治療内容

右下の奥から2番目の歯に保険の金属の詰め物が装着されていました。
麻酔をしてから金属を除去し、セラミック80%の歯科用複合材料を用い、お口の中で直接詰める処置を行いました。

●治療結果

歯に合わせた自然な形態と色調の詰め物に変わり、患者さんは見た目の改善に満足されました。

●費用

39,000円（税込）

●保険適用かどうか

自由診療

●治療のポイントや特徴

この材料は時間と共にすり減ったり欠けたりする可能性がありますが、そうなった場合でも金属やセラミックを使う治療と異なり部分的な補修が可能です。
健康な歯をなるべく削らない最小限の治療ができるのがメリットです。

●リスク・副作用

処置後、一時的に知覚過敏が出る可能性があります。
食べ物や噛み合わせの力などにより詰め物の材料が欠けたり、詰め物の隙間から着色が起こることがあります。

▶虫歯治療：ダイレクトボンディング③

▶虫歯治療：ダイレクトボンディング④